ご存知のようにコーチング・セッションにおいて、クライアントさんはあるテーマについて「話をし、考えを整理し、今後どうするか意思決定」をされます。
意思決定といっても、日常の行動や自分の態度など小さなことで、決して仰々しいものではありません。

〇〇に挑戦するために、下調べしよう・・・とか、
〇〇さんと、上手く距離を取ろう・・・とか、
服から断捨離しよう・・・とか
〇〇を目指して生きよう・・・とか。

普通に生活していれば、大なり小なりそんな意思決定はたくさんありますよね。

しかし、そこに行きつくまでにはちょっとした紆余曲折があるわけです。
決定までにいろんな選択肢があったり、
別のテーマの方が大切だと気づいたり、
やる気はないけど必要だったことが分かったりして、
話を重ねるうちにやっと自分で「こうしたい」と思い始めます。

だからコーチは、

「それ、他の人から見たらどう見えてます?」(視座の移動)
「それ、他にやり方ありますか?」(第3の選択肢)
「あと3つくらい、思いつきます?」(可能性の幅を広げる)

など、クライアントさんが一人で考えるより、少し広く考えられるようサポートします。

なぜなら、人は自分である考えが芽生えると執着していまい、他の可能性を排除し、考えるのを止めてしまう傾向があるからです。
いろんな角度から広く考えた方が、精度が上がります。

また意思決定においては、論理的に考えているつもりでも、自分で考えの片寄り、思い込みなどが邪魔することもがあります。

『科学的な適職』(鈴木祐・著 クロスメディアパブリッシング)には、人には脳内にバグがあるため、意思決定を失敗するのだと言います。(この本では職業を決めること)

脳内のバグとは、認知バイアスのこと。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、認知バイアスすなわち「認知のゆがみ」は、先ほどの自分の考えの片寄りや、思い込み、偏見、思考の歪み、不合理性などがそれにあたります。
それが人間の脳に存在し、間違いを犯すのです。

例えば、自分に都合のいい情報だけを集め、採用してしまう(確証バイアス)や「自分だけはかからない。大丈夫だ」と思ってしまう(楽観性バイアス)など、皆さんの中にもこんなバイアスを経験されたことがあるのではないでしょうか。

他にも、
・自分の選択は正しい。他の人の選択よりも。
・頭に思い浮かびやすい目立つものを選択すべきだと感じる。
・同じ情報を繰り返し目にすることで、真実に感じる。
なんていうことを、頭のどこかで持っていませんか?

これらの認知バイアスがあるため、人は意思決定の時に正しい決定ができないのです。

こうした認知バイアスは、人間誰しも持っています
私にもありますし、皆さんにもあります。これらのバイアスがあるから、自信を持てたり、すばやく決断が出来ていたとも考えられます。

でも、それが意思決定の精度を落としているのであれば、大事な決定の時には「自分にはこれらの認知バイアスがあり、それが正しい判断を邪魔することがある」と肝に銘じておくことが大切なのです。

コーチングでは、これらのバイアスの影響を少しでも排除するために、いろんな角度で考えることで、冒頭で紹介した「生活の中での意思決定」を創っていきます。安易に思いついたものに飛びつくのでなく、考え抜いたものの方が、精度はもちろん自分の納得感も違いますしね。

大きいテーマだと、1時間程度で収まるはずもなく、何回かに渡って考えていきます。職業選択、今後の生き方など大きい意思決定の場合は、必要な時間です。

この本を読んで、私の役目はクライアントさんの抱える認知バイアスを揺さぶったり、ブロックを外すことでもあるのだと、改めて感じました。

さて、この本『科学的な適職』は、職業を選ぶ方法を系統立てて紹介しています。認知バイアスに関しては、この中の一部です。

「適職」とは科学でどう導くの?と興味があり手に取りましたが、得られたものは期待外に多かったです。人はどのように意思決定するのか?どんな間違いを犯しやすいのか?エビデンスと共に紹介されていて、興味深いものでした。

世の中でよく言われる「好きなことを仕事にしよう!」や「適性で仕事を選ぼう!」というのは大罪である(!)と、これまでの研究を紹介しながら説明されています。
今まではそう聞かされてきたのに・・・。(笑)
ご興味があれば、読んでみてくださいね。

さて、今回のテーマの「意思決定の失敗率を下げる方法」を紹介します。

一つ目は、「3つ以上の選択肢を考えろ」ということです。

「Aか?Bか?」
「やるか?やらないのか?」

データによれば二択だけで意思決定した場合の失敗率は52%なのに対し、3つ以上の選択肢を用意した場合の失敗率は32%まで下がっています

選択肢が多いと考えるのが疲れますよね?
早く決めてラクになりたいですよね?

・・・しかし決定を失敗したくなければ、二択でなく三択以上の茨の道を行った方がいいかもしれません。

「Aか?B?それともC?他にもある?」
「やる?やらない?保留?」
「テスラの株買う?買わない?他の成長株探す?」www

判断やタイミングが遅れてはいけませんが、転職のようにじっくり考えた方がいいものもあります。大切なものに関しては、しっかり考え抜き、決断の失敗率を下げてください。

二つ目は、先ほどお伝えした「自分の頭にも認知バイアスの存在することを知っておく」ということです。

根拠のない自信は、時に力強く自分を押し進めますが、「ありゃ?これもしかして認知バイアスか?」と思って立ち止まることも、失敗率を下げるのに役立つはずです。

皆さんの意思決定の時に、思い出していただけると幸いです。